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『動く山 アジアの山車(この世とあの世をむすぶもの……)』出版

2012年12月25日 アジアンデザイン研究所

本書は、2010年6月12日、神戸芸術工科大学(KDU)アジアンデザイン研究所(RIAD)が主催した、第1回国際シンポジウムの記録である。「アジアの山車」の比較研究をテーマにした各発表者のその後の調査研究の成果も加え、図版を増補し編集している。
「動く山──この世とあの世を結ぶもの」と題されたこのシンポジウムでは、中国、バリ、イラン、日本、インド、タイ各国を代表するユニークなデザインの山車が、シンガポール、テヘラン、ムンバイ、バンコクから参加された研究者、そして当学の研究者により報告された。
これまで日本国内の山車研究が、祭礼の制度、宗教儀礼、形態分類といった歴史的・民俗学的・社会学的視点からおこなわれていたのに対して、今回のシンポジウムでは、山車の造形が包みこむ神話性・象徴性を前面に押しだし、デザインや造形性の視点からアジア各地の山車を比較しつつ、これまで注目されることが少なかった造形の妙をとらえようとする試みである。
本書に収録したカラー図版の隅々に、その特質を見ることができるだろう。
天に向って伸び立つ山車の造形は、天と地、神と人を垂直に結びつける宇宙山や宇宙樹、生命樹を象っている。龍蛇や亀、天駆ける馬が加わり、造形の妙をつくす山車は、大自然の霊気を象徴する。さらに、人びとが背に担ぎ中空に浮かぶ山車の移動は、此岸と彼岸の結びつきを暗示している。宇宙観・神話観が色濃く反映された山車造形の多様さは、アジア独特のものである。
本書は、アジアの山車、その美と神話性を紹介する、最初の一冊となるだろう。

  • 定価:本体2400円+税
  • A5判/並製/348ページ
  • ISBN978-4-903500-65-2 C0039
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