神戸芸術工科大学を卒業する皆さんへ

神戸芸術工科大学を卒業する皆さんへ

本日、学位が授与された、学部生327名、大学院生33名のみなさん。卒業ならびに修了おめでとうございます。
日々研鑽を積み、今日、この日を迎えたみなさんと、みなさんを支えてこられた、ご家族の皆様に敬意を表するともに、心からお祝い申し上げます。

さて、今、みなさんを取り巻く世界は、決して希望だけに満ちたものではありません。
加速する地球生態の変化、多発する大規模災害、今も世界各地で猛威をふるっている感染症、そしてこれらに関する数々の情報が世界を瞬時にめぐり、国々の経済や人々の生活を根本から揺さぶっています。この先、世界がどのように変化していくのか、正確に予測することは不可能です。

そこで、みなさんに私から一つのお願いがあります。
今、みなさんは、その手に一枚の「布」を持っています。それは、この大学で芸術工学を学び、豊かな学識と多様な表現力を身につける中で獲得した「布」です。基礎教育と専門教育で学んだ「知」の縦糸に、時を惜しんで仲間と励んだ実習、制作、社会での実体験などで鍛えた「術」の横糸を織り込み、みなさん一人一人が織り上げた世界に一枚しかない「布」です。私は、みなさんに、これからもその「布」を織り続けて欲しいのです。

これから先、みなさんが新しい知識と出会い、新たな表現技術を生み出すたび、その布に織り込む糸が増えていくことでしょう。そうして織り続けた「布」は、船の大きな「帆」となり、みなさんを更なる可能性へと導いてくれるはずです。その船のめざす新たな行き先で、みなさんが、地球社会の持続的発展に、様々な形で貢献してくれることを心から願っています。

本日、社会人、また大学院生として、新たな旅に出るみなさんが、神戸芸術工科大学の一員であるという誇りを胸に、それぞれの場所で、輝けることを祈り、祝福の言葉とさせていただきます。
今、一度、卒業おめでとうございます。

2020年3月20日
神戸芸術工科大学
学長　齊木崇人