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第5回『学長の庭』2011年09月17日

2011年10月12日 学長の庭

2011年9月22日~10月14日まで開催される、
関根伸夫氏による『「位相―大地」再制作プロジェクト』のため、
9月17日から作品再制作が開始しました。
その開始直後、皆さまにお話を伺いました。

ゲスト:
  • 関根伸夫:神戸芸術工科大学 環境美術家・大学院客員教授
  • 藤本修三:神戸芸術工科大学 先端芸術学部学部長
  • 宮本隆司:神戸芸術工科大学 先端芸術学部教授
  • 山﨑 均:神戸芸術工科大学 デザイン教育研究センター主任
写真撮影:
  • 仁井本大介:神戸芸術工科大学 先端芸術学部実習助手

1.「上海のアトリエから」

齊木:
関根さん、上海からお帰りなさい。上海では今どのような展開をされていますか。
関根:
2011年11月11日から上海彫刻センターで個展があり、その準備をしています。
齊木:
今までの作品ですか?
関根:
今までの作品を80点くらい。
本当は、昨年開催予定だったのが、作品を日本から送った時に税関で止められて、動かなかったから昨年は開催できなかった。
今回は、今もう上海のアトリエに作品が入っていますから大丈夫。
齊木:
関根さんの上海のアトリエには、中国を代表するアーティストが10人が入って、外国人は二人だけということですが、アトリエは、今まで経験された事の無い異質な空間ですか?
関根:
アトリエは、上海で1919年頃に窯工場があって、その跡地の一か所。
ただ、周りにいる上海の芸術家は売れてる作家。
私は、その人達の新しいエネルギーになればと思っています。
面白いのは、彼らに自分たちの論評を書いてくれと言われている。これは面白いチャレンジだけど、まだ時間がなくてやるに至ってないけど。書く前に背後の歴史観とか哲学を勉強しないとできないし。
作品からは感ずるけど、勉強しないと検証することができないからね。
齊木:
新しい出会いがあるわけですね。
関根:
はい。私としても違う角度から見て論評してあげたい。日本という東洋の片々にいるわけですからね。

2.「ベネチュア・ビエンナーレで」

齊木:
関根さんはかつて、ベネチュアビエンナーレで北イタリアから石を運ばれましたよね。ベネチアでは、関根さんの作品に対して、ヨーロッパのアーティストの見方はどうでしたか。
関根:
ルイジアナ美術館を創設し、なおかつ館長だった、クヌート・イェンセンが、はじめにルイジアナで見せてくれたのが、石の上に石が重なっているようなストーンヘンジ遺跡でした。イェンセンさんは「ここが自分の遊び場だから、お前の作品はスッと理解できた。」と言ってくれました。それが出会いだったんですね。
齊木:
子供のころの遊び場での経験が面白いですね。
藤本:
作家のつくる作品の背景には、正直なところ体験があり直感的にわかるんでしょうね。
関根:
ストーンヘンジのある古い文化的な意味でのつながりがあるんでしょうね。
説明の要らない作品なんです。説得しなくても自立している
藤本:
立体を作っている者にとっては、引力には抵抗があるんです。台にのせるかどうかね。あの作品は「上手くやったな」と思ったんです。石はただの石だけど、ステンレスの柱の上にそれが浮いてるのが良いんです。

3.「位相大地へ」

宮本:
「位相大地」を見て海外の方の反応は?
関根:
来年の5月にダラスでつくるんですが、彼らも興味を持ってくれて自分のところで制作をしたらと言ってくれました。
ある意味でのバカバカしさがあると思うんです。あの作品を見ると、禅的な世界で分かりやすいんですね。
東洋的なモノはしばしば言語的に説明するとぬかるみにはまる。
われわれの彫刻は比較的可能なものを含んでいると思いますね。東洋的な哲学は私みたいな作品を使うのがわかりやすいと。
齊木:
ダラスの反応が楽しみですね。
山崎:
ダラスは二重都市で、オアシスのように都市が寄り添っている。とっても面白い空間です。
齊木:
43年前の須磨野外彫刻展の「位相大地」の制作時に、どのような発想から考えたのか聞かせてください。
関根:
地球に一点穴を入れて中身を出すと、地球は空っぽになる。反転すると裏返るという発想からです。
論理を伝えるには、相対性理論の光の速さが基準。
光の速さは人間が体験できないけれど、相対性理論という一つの学説はできる。
それは思考実験の賜物。
宮本:
壮大な無駄なように思えるけど、あえてやってしまう事が、禅的な若さですね。
1週間では完成しないで手伝ってもらったんですね。
今回機械で制作するんですが、自分たちの身体で穴を掘るというのが一つ大きな隠された事かと。挑戦するあたりが関根さんの大きな源かと思います。
関根:
今回みたいに機械でつくるのは、それでも許してくれるかなと思ってますが。
前回も作った事があるけど、ある意味一つの地場になりうる力があるんですね。この作品の持っている制作のシステムに力があるんです。それは、人間の手を経ても、経なくてもできるんじゃないかと…。

4.「芸工大キャンパスにて」

宮本:
私もキャンパス内のカイの木と樫の木の延長線にある作品を見て、全く芸工大のキャンパス空間が変質したと感じました。このキャンパスの大きな空間が位相大地の大きな穴につながっています。
齊木:
私も扇方広場の階段を上にあがって、位相大地を見下ろして気がついたのが扇方広場の腕を広げた空間も中心性を獲得している。作品に空間をまとめ上げる中心性を感じました。
宮本:
遠くの山を意識しましたね。
山﨑:
ひとつの空間を変える力を作品が持っていて、その環境から引き出してくるシステムのようなアートの力を感じますね。
齊木:
おそらく私たちが感じる以上に、学生達が何かを感じてくれるでしょうね。
関根:
位相大地のスケールの10倍の大きさのものを、万里の頂上の近くに作ろうというプロジェクトを起こしている。高さ27メートル、直径22メートル。完全に建築で土木。
宮本:
万里の頂上がピラミッド並みになりますね。基本的な発想は同じですよね。地球を掘って裏返すのは。そういうものすごい力を秘めてます。
齊木:
100倍のものをつくりたいですね。
関根:
万里の頂上は、人類の最大の愚策とも言われているけど、マッチするようにつくりたい。
宮本:
壮大な無駄ということですね
山﨑:
最終的に無駄でも、ひきつける磁場がありますね。
藤本:
結果が楽しみだけど。学生達は作品を想像して、見てる、できたら触る。そして、穴に吸い込まれる。それがこの作品なんですね。
齊木:
空間の議論だけでなく、人類が経験してきた造形性もつないでしまう。
山﨑:
「モニュメント性とつなぐ」。ですね。

5.「ダラスの位相大地へ」

齊木:
実態のある形や物を直観力と思考力で、関根さんは身体性で生み出す。
今新しいアートは仮想世界であったり実態をのけたもので動こうとしている。
中国の若者の中には異次元の世界に入ろうとしている。ぶつかり合う出会いの場があると思うんだけど、ダラスで位相大地が完成した時に若い人たちが反応するか楽しみです。
関根:
近年アメリカの人々が「もの派」に興味を持った。しばらく展開があるから、その間アメリカに行ってみようかと思ってね。40年前のものが時間がたって、意味付けから注目されるのが不思議だけど。
悪い事では無いから、活動しようと思ってます。
今回扇型広場でやったってことは、意味のあること。
土を掘って作品を完成し、また元に戻す。モニュメントではなく、思想があそこに刻まれる。美術館以上に意味があること。
齊木:
今回関根さんの作品が大学のキャンパスにあるけど、今から私たちの大学が求める世界のコレクションを大学に再現したい。建物をつくるだけではない、いつも何かが実験される大学でありたい。
宮本:
扇型広場は、上からみたポイントが良い。何も無い状態を制作前に撮っていますが、実に良かった。
関根:
実は、そこに、日常の深い意味を思い起こすんですよ。リーウーファンさんが最初言ったように覚えています。何気ないんだけど、何かを喚起させる作品。
齊木:
ニューヨークのmomaでのオノ・ヨーコのメッセージも「再現」の作品だった。時空をつなぐ。そうなるとキャンパス全体が美術館でいいんですね。
関根:
学内に、美術館は立てずに全体を美術館とする。それにはキュレーターが大切。その環境の中で学生達が育つんだよね。
齊木:
私たちもこれをきっかけに関根さんの作品とともに時空の旅をさせてください。神戸芸術工科大学ではいろいろな若い人たちが育ってますから、その活動を求めて旅してみたいですね。
今日は、ありがとうございました。