- 作者情報
- 教員 生産・工芸デザイン学科 蛭田 直
岐阜県立情報科学芸術大学院大学 メディア表現研究科 修了 2008年
神戸芸術工科大学 生産・工芸デザイン学科 准教授、神戸芸術工科大学 大学院芸術工学研究科 准教授
主な業績
[著書]+Gainer(共著)2007年11月,九天社,B5(執筆箇所:第二章「COOK_BOOK」pp.84-148, 第三章「ゲイナーカイダン」,pp.150-157)
[論文]導電インク製品の量産化における実装方法の検討と実践「ブックカバーライト」(作品掲載)共著(蛭田直,長山大樹,後藤和彦)2019年3月デザイン学研究作品集,24巻1号(日本デザイン学会)A4,pp.58-61 /重度肢体不自由児のためのアイカメラ用ゴーグル開発に関する基礎研究―デジタルファブリケーションを活用した個人用ホルダの作成―共著(宮地弘一郎,蛭田直,渡邉流理也,村松浩幸)2018年3月人間学研究,vol.16(中部人間学会)A4,pp.40-43 /正三角形のユニットでパターンデザインの制作と学習ができるウェブアプリケーションの開発(作品掲載)共著(蛭田直,吉川義盛)2017年3月デザイン学研究作品集,22巻1号(日本デザイン学会)A4, pp.14-19
STORY
制作ストーリー
安藤七宝店と生産・工芸デザイン学科 蛭田直 准教授(情報科学芸術大学院大学:後期博士課程3年)の産学共同研究成果「桜清流紋(さくらせいりゅうもん)」。
上下を反転させることで、伝統を表す「桜」と未来を表す「清流」の二つの意匠が現れるリバーシブル構造の七宝花器である。

本作品は、安藤七宝店と生産・工芸デザイン学科 准教授 蛭田直(情報科学芸術大学院大学:後期博士課程3年)の産学共同研究により開発された「立体電気鋳造」技術を用いて制作された。これまで電鋳をもちいる「電鋳七宝」は、精密な複写力と量産性を持ち合わせていながら、立物と呼ばれる立体の素地製造は職人の悲願であり困難とされていた。
本研究では、課題であった「凹型母型への均一な電鋳析出」を、3Dプリントなどのデジタルファブリケーション技術と伝統的な職人技の融合によって克服。複雑で自由な造形と量産性の両立が可能となったこの技術を作品に用いることで、新たな七宝焼の表現を実現。七宝の新たな可能性を拓くと同時に、現代の暮らしに寄り添う工芸の在り方を提示している。
制作の背景
七宝の素地は胎(たい) とも呼ばれ、従来、主に鍛金やヘラ絞りといった技法で製作されてきた。鍛金による素地づくりは自由な造形を可能にするが、高度な熟練技能と多くの時間を要するため量産は困難である。また、ヘラ絞りは一定の量産性を持つものの、形状が回転対称体に限定されるという制約があった。
つまり、七宝の素地製造において、複雑で自由な造形と量産性の両立が長年の大きな課題であり、ジレンマであった。そうした中、昭和32年に発明された電鋳(電気鋳造)を用いた七宝焼である電鋳七宝は、精緻な複写を可能にする技術で、量産性をもちながら精密工芸を実現できる素地製造技術だが、電鋳の特性により、凹部形状母型への析出が困難であるという課題があった。そのため、凹部形状母型をもちいた電鋳による花瓶などの立物(立体の七宝焼)の素地を製造することは、職人の悲願であった。
本作品「桜清流紋」は、この長年の困難を産学連携による技術革新で克服し、立体電鋳ならではのリバーシブル構造や自由な三次元形状といった意匠の可能性を最大限に引き出しつつ、桜と清流というモチーフに託して伝統を未来へと繋げる挑戦が結実した成果である。
立体電気鋳造の特徴
- 鍛金、彫金、鎚起七宝の表現をもつ立物の素地の量産が可能
- 本七宝(有線七宝)をはじめとした七宝技法へ適応が可能
- 七宝以外に減少が進む鍛金職人の代替技術として応用可能
- 美術の領域においても七宝の彫刻や立体作品が実現可能
3つのポイント
ポイント1 困難であった立体造形の実現
開発した新技術「立体電鋳七宝」を使い、これまでにない意匠の七宝に挑戦。例えば、複雑な二重らせん構造や透かし模様、そして多様な紋様の調和。これらは鍛金やヘラ絞りといった従来の技法では大量生産が難しく、不可能とされてきた七宝の新しいデザインの世界を拓く。
ポイント2 七宝の未来をつくるメンバー
新たな七宝を目指し、若手を中心としたメンバーがベテランの助言を得て、伝承性を高めるよう取り組んだ。
職人技とテクノロジーの融合
意匠検討の早い段階で3D プリントした原寸モックを使ったり、原型の素地を3Dプリントして職人が造形を施すなど、新たなデザインプロセスも構築。
二つの意匠が現れるリバーシブル構造
伝統を表す「桜」の意匠
豊かな膨らみを上部にもつ花瓶は「肩付き」と呼ばれる七宝花器の伝統的な意匠。伝統的な紋様である「桜」ともに、伝統と革新を楽しむことができる。
未来へ続く「清流」の意匠
上部を入れ替えると、「清流紋」が表れる。清流の流れは、未来に続く七宝の伝統を表現しながら、現代的なライフスタイルにあわせて花のある暮らしを提案。


参考サイト