- 作者情報
- 教員 ビジュアルデザイン学科 黄 國賓
神戸芸術工科大学大学院芸術工学研究科総合デザイン専攻修了 1997年/神戸芸術工科大学大学院芸術工学研究科 博士課程修了 2005年
神戸芸術工科大学 ビジュアルデザイン学科 教授
【主な業績】
[著書]「杉浦康平のアジアンデザイン」(共・新宿書房)/「動く山 アジアの山車」(共・左右社)「霊獣が運ぶアジアの山車」(共・工作 舎)
[論文]「宇宙を冠る」: シャナ冠の造形原理を読み解く試みなど/[作 品]2009北京世界デザイン大会「The Tai Chi of image」など
STORY
制作ストーリー
アジア文化圏では、古代から各地にユニークな「かぶりもの」(冠、頭飾り、傘など頭上に戴く造形物)が存在する。これらの「かぶりもの」はアジアに広くひろがる宇宙観、宇宙山(須弥山)のイメージ、生命樹を象徴する造形の集合体として、地域や民族の宇宙観を示しながら時代の流行などを取り入れ、多様な造形を育んできた。
「宇宙を冠る」では、チベット、ブータン、日本、韓国(新羅)、インドネシアのバリ島、中国など、各地の「かぶりもの」における①造形②神話的背景③象徴性④「かぶりもの」を戴く者の祭祀空間における行動や仕草⑤宇宙観の5つの項目について研究調査の成果をまとめ、さらに、それぞれを比較・分析しながらアジアにおける「かぶりもの」の体系を解読した。 『宇宙を冠る』は、A4判で、本編Ⅰ(114ページ)、カラー図版(32ページ)、本編Ⅱ(106ページ)の三部構成になっており、合計252ページに及ぶ。
本編Ⅰは「陽」のイメージを表し、主に「宇宙を冠る」:シャナ冠の造形原理を読み解く試み、東北地区シャーマン服飾、「新羅の金冠」―造形の基本とその神話的意味を収録する。本編Ⅱは「陰」のイメージを表し、主に「踊るジオラマ」:日本の民俗芸能の世界観、「宇宙を纏う」:冕服の造形原理を読み解く試み、「ジャウクの冠」をめぐる意味と象徴性で構成されている。陰陽が流動し、「溶け合い、一になる」ことが、アジア各地の冠に敷衍した対立と融合の宇宙観念を示している。
一方、カラー図版は本編Ⅰと本編Ⅱの間にあり、本編Ⅰ、Ⅱの関連図像とその解説で構成され、本編の内容と照応しあう。「宇宙を冠る」のカバーの表と裏には、バリ島の踊り手の頭上に輝く金色の冠と、瞑想する須弥山との関連が表されている。本表紙、裏表紙には光の反射で虹が現れ、アジア冠の高貴さや厳かな世界観を示している。また、カバーから本表紙、裏表紙、扉ページ、本編のマージンには、宇宙に散乱する星の光が包み込まれようとしている。[黄 國賓]