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「ホームレス・ホテル」を見学してきました II

2011年2月17日 00:37

16feb11-003.jpg「私たちにとって彼らはゲスト。部屋代を払ってもらって、食事・お掃除・お洗濯のサービスを私たちは提供します。そしてゲストにもゲストしての決まりを守ってもらうのです。お互いの立場を尊重する環境で暮らすことによって、そしてその責任を全うすることによって彼らも自分自身を大切にすることを身につけていく。シェルターで保護されるというのとは根本的に違います。彼らが自立できるようになるまでには様々なサポートが必要だけど、社会復帰というのは自分の責任で暮らすということ。このホテルでの生活がそこに移行していくための最後のステップなの。」
 サンドラさんのバックグラウンドはソーシャルワークではなく、純粋なホテル・レストラン経営。ホームレスホテル以外にアムステルダム北のNDSMという昔の造船所の跡地でボートホテルも経営しておられます。そして彼女の次のプロジェクトは「フルーツケーキ アンド クリスプ」というベーカリー。プロフェッショナルなパティシエと共に社会復帰途上のホームレスの人たちが働くお店の企画です。実は私たちが現在計画中のアムステルダムの高齢者住宅の一階がそのお店の場所の候補に挙がって、都市プロジェクトマネジャーに紹介されたというわけです。経済不況だけでなく、グローバル化によって「モノ作り」が途上国に出て行ってしまったオランダでは構造的に高学歴を前提としたコンペティティブな仕事ばかりになりつつあります。その上自治体も政府も金欠。このような状況ではいわゆる社会的弱者と言われる人たちの社会参加・復帰の場はなかなか生まれない。ですからサンドラさんの企画は貴重だと私は思いました。「ボートホテルにも元ホームレスだった人が何人かメインテナンスなどの仕事で働いています。他のスタッフよりもきめ細やかな指導が求められるし、同じだけの仕事量はすぐにはこなせない。でも少しずつ学んでいく姿を見ていると、何らかの理由で、そして彼らにはどうしようもない理由でこれまで身につけることができなかったことを習得して自立して生活するお金を稼げる場所が、税金や補助金に依存せずに、スモールスケールでもビジネスとして成り立っていけばサステイナブルだと考えているんです。」
 明るくてエネルギーいっぱいのサンドラさん「フルーツケーキ アンド クリスプ」ぜひとも実現させたいものだと思いました!
1  アムステルダムサウス ベルラーヘの都市デザイン 3で説明している住宅法の成立を受けて建築家ベルラーヘがデザインしたアムステルダム南地区。美しい町並みとストリートのデザインで知られています。
2 アムステルダムスクール 20世紀の初めのオランダの建築様式。レンガ、木、石を使った表現の豊かな建築様式。イギリスのアーツアンドクラフトに考え方が似ています。
3 1902年に制定された住宅法はそれ以降住宅地の開発の際にはまずは自治体が都市デザインをつくらなければならないという法律で、良質な住宅・住環境をつくっていくことを目的としている。これは19世紀末中盤以降、産業革命によって都市に急激に労働者が集まり、スラム化した問題を解決しようとする社会主義的な考えを元にしている。ホームレスの問題を解決しようとするムーブメントも同じ考え方を基盤としているといってよいでしょう。

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