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神戸芸術工科大学の学生が考える、図書館の「あったらいいな」

2009年07月10日 情報図書館

とある講義で「あなたが図書館に必要だ、欲しいと思う機能を提案してください」という課題を出しました。学生はどのように答えたでしょう?

先日、講義の中で昨今の図書館、ライブラリースペースで見られる新しい事例を解説しました。その後、「あなたが図書館に必要だ、欲しいと思う機能を提案してください」という課題を出したのですが、なかなか面白い答えを得ることができました。
整理すると、下記の4つの意見が大勢として挙げられます。

1)オススメ機能
amazonに代表されるように「この本を買っている人はこんな本も買っています」とレコメンドしてくれる機能を求めている学生が今回最も多かったです。 なお、ウェブに限らず書店のように「ポップをつけてほしい」、「オススメ本のコーナーをつくってほしい」という意見も見られました。リアルであろうが ヴァーチャルであろうが誰かの意見を参考にしたい、ということのようです。なお貸出履歴の紙を貼り付けるように、読んだ感想を数行書き込めるようなカード を貼り付けておくとよいのでは、という面白い提案もありました。

2)個人スペース
以外と要望が多かったのが「ひとりになれるスペース」。近年、図書館はグループ学習用の部屋やおしゃべりができるスペースなど数名で利用できる場所を意識 してきたように思いますが、ゆっくりとリラックスして本やDVDを楽しみたいというむきも根強いようです。この発想の源の一つには「ネットカフェ」にある らしく、数名が言及していました。またユニークな提案として「ごろ寝スペース」がありましたが、人目を気にしない、リラックスする、という意味ではこの項 目に含まれるでしょう。

3)おしゃべりスペース(カフェ)
この意見がもっとも多くなるのではと予想していたのですが、量的には3番手くらいでした。
家でやるようにコーヒーやお茶などを飲みながら本を読みたい、という素直な要望のほか、複数で利用する、おしゃべりができるなど、カフェの持つ雰囲気を望むという意見が見られました。
単に飲食ができるというだけではなく、その雰囲気が重要という点は勉強になりました。
上の個人スペースとは反対方向の意見ですが、図書館において相反するものではなく、どちらも一定の希求があり、ゾーニングすべき問題と理解すべきでしょう。

4)音楽の貸出と音楽を聴きながら本が読めるスペース
「本を読むときに音楽を聴くので一緒に借りたい」という意見と「持ち込まれたプレーヤーの音漏れが気になるので、いっそのこと聴きながら読める場所とをわ けてほしい」という意見とがみられました。同様の結論ではありますが、その意図は異なっている点が面白い。またデザイナーにとって音楽は重要なインスピ レーション源であるため音楽も貸出てほしい、というニーズも読み取れた。

以上が、複数の人が提案した図書館の「あったらいいな」ですが、それ以外にもユニークな、また示唆に富む提案もみられました。図書館のサービスを考える上で耳を傾ける点も多いです。

[検索に関すること]
・本の中にある画像で本を探せるようになると便利
・それぞれの本をキーワード(タグ)で検索できるようになれば便利
・図書館内に本のある場所がすぐわかるようになったらいい。(※筆者註:ジュンク堂などで本を探すと打ち出されるレシートのようなものかと推測)それがケータイでみれると便利。
・現在の情報検索システムは膨大すぎるように感じるので、一つの本棚毎に小分けの検索システムを作ってはどうか。
・全世界の図書館の本をオンラインで閲覧できるようになったらいい。

[貸借について]
・本の予約をケータイで。
・宅配サービスがあると便利。

[環境、展示ほか]
・オススメの本やDVD等の情報を表示するためのモニターを作ってはどうか。
・デザインや芸術の本を見ながら描けたり、作業できる場所があればいい。
・畳、ゴザの空間。
・ロッカー
・ソファ

まとめ:
カフェのような空間は人気が高そうだと予想していたが、ネットカフェに着想を得た個の空間を希求する声が多かった。仕切りをつけずとも視線が気にならない ような閲覧席の配置など、新図書館計画の際には応用できる点が多く、有意義な結果だったと感じている。amazonのオススメ機能やポップ、検索結果の打 ち出しなど、意見の多くが日常自分たちが接しているサービスとの比較において成り立っている点に図書館員は注目すべきであろう。

※以上の回答は、神戸芸術工科大学学部生対象の講義「デザイン文献学」履修者が課題として提出した内容に基づいています。